「姉だ。旧姓は新井さやか。十年前に結婚して新庄になった」
「え……ええええ⁉」
フロアを掛けるような叫び声を上げたのは、同期ふたり組だ。そんな彼らと一緒に私も目を丸める。
並び立つ社長と新庄さんはそろって美形で、たしかに似ているかもしれない。
ふたりとも長身で、顔立ちがはっきりしていて……改めて見ると、切れ長の目は同じ遺伝子を象徴するかのようにそっくりだ。
「あ、あ、姉って……そんなの、誰も知らないですよ」
さすがの敏腕営業マンも驚きを隠せないらしい。声を詰まらせながら、社長と新庄さんを交互に見ている。
「黙ってたからな。けど、内藤は知ってる」
社長の言葉で私はパソコンの基本操作を叩きこんでくれた先輩社員を思い出した。
わが社の総務から人事から事務全般を請け負っている内藤さんは、社長と同じ二十九歳で古くからこの会社にいる人だ。

