「旦那様よ。カメラマンなの」
頬を引き攣らせている名取さんに、新庄さんは写真の中の自分たちを指さす。薬指におそろいの指輪が飾られていた。
「今は仕事の関係でフランス在住なんだけど、うちの家族に会うために一緒に一時帰国してるのよ」
証拠を提示するように、胸元から写真に写っているものと同じ指輪のついたネックレスを取り出した。
「傷がつくとイヤだから、いつもはこうやって身に着けてるの」
「こいつは既婚者なんだよ」
社長が補足するように言うと、とろけそうな微笑みを浮かべていた新庄さんが急に目を尖らせた。
「優志くん! お姉様に向かってこいつとは何よ!」
「お姉様……?」
ぽかんとしている私たちを見て、社長は面倒そうに目を細める。

