この会社の創業当時から社長を手伝っていたという彼女は、きっと彼にとって特別な存在だろう。それが恋愛的な意味を含んでいたかどうかは、わからないけれど。
でも、と私はぎゅっと手を握りしめる。社長を信じると、決めているから。
はあっと風船から空気が漏れているような長いため息をついて、社長はやってられないというように首を振った。
「女除けにちょうどよくて噂を放置していたが、あいつとはそういう関係じゃない」
「そんなの、信じられるわけないじゃないですか! だってあんなベタベタしといて」
「ベタベタした覚えはない。事実付き合ってないしな。そもそも」
「じゃあ、なんで新庄さんのことだけ名前で呼ぶんですか!」
必死な顔で噛みつこうとする名取さんを見下ろし、社長はもう一度ため息をついた。
「だからそれは――」
「優志くーん!」

