「……ひどい、じゃないですか」
営業マンの顔が大きく歪んだ。普段にこにこしている彼の眉間に深い溝が刻まれて、私は目を疑う。
「ん?」と眉を持ち上げる社長に、名取さんは掴みかかる勢いで言い放った。
「いくら新庄さんとスタイルが似てるからって、前原ちゃんを代わりにするのはひどくないですか⁉」
フロアに声が響いて、短い沈黙が落ちた。
必死そうな顔の名取さんと、驚いたように目を丸めている板倉さんが目に入る。でも、隣に立つ社長の顔は見ることができなかった。表情を確認するのが、少しだけ怖い。
消えたと思っていた胸の陰りを営業マンに少しだけ引きずり出されて、私は曖昧に笑う。
新庄さんと社長のあいだには、私には入り込めない絆がある。それは確かだ。

