同期ふたり組の質問が私の耳を素通りしていく。頭に響いているのは、たった今社長が口にした言葉だ。
結婚を前提に……⁉
胸の高鳴りがいっそう激しくなって、頬が熱くなっていく。社長がそんなふうに考えてるなんて思ってもみなかった。
「まあそういうわけだから、前原のことは心配するな。あと、このことはしばらく胸にしまっておいてもらえると助かる」
「えーそうなんですか! えーびっくり! ちょっと前原ちゃんなんで言ってくれないの!」
目をきらきらさせて板倉さんが私の腕を突いてくる。素直に驚きを表現している彼女の横で、名取さんは固まっていた。右手を空中に突き出した不自然な格好のまま瞬間冷凍でもされたみたいだ。そんな彼の口元が微かに動く。

