「よく知りもしない相手とルームシェアするくらいなら、俺の家の方が何倍も安全だと思わない?」

「え……ええと」

 名取さんって、こんなに心配性だったっけ?

 きょとんとしている板倉さんの前を素通りして、彼はずいっと私に詰め寄る。

「ねえ前原ちゃん」

「俺だよ」

 ふいに声が落ちてきて、私たちは固まった。顔を上げると、二階部分の手すりにもたれるようにして、わが社のトップが一階を見下ろしている。板倉さんが大きな目をまたたいた。

「社長、二階にいたんですか」

「システム部にな。確認したいことがあって」

 言いながら、彼はノートPCを片手にらせん階段を下りてくる。