そんな新庄さんは一通り私を案内してくれると、フロアの一角にあったスタンディングの丸テーブルに立ち寄った。スタンドに置かれていたタブレットを手に取り、どことなく遠い目でフロアを見やる。
「私、今年三十二歳になるんだけど、創業当時からこの会社にいるの。だからサイトの運用とか、掲載するコーディネートの商品撮影とか、営業とか、とにかくなんでもやってきたのよね」
三十二という数字に心の中で『嘘でしょ⁉』と叫びつつ、顔では平静を装って彼女の話にうなずいた。
新庄さんは私に目を戻し、いたずらっぽく笑う。
「結愛ちゃんは当面アシスタントって位置づけだけど、やっぱりなんでも屋になると思うから、覚悟しておいてね」
「は、はい……」
「おい! この出張報告書、出したやつ誰だ!」

