社長が帰ってきたのかも。

 かもじゃなくて、そうに決まってる。きっと思い直してくれたのだ。

 そうじゃなかったら、いったい誰がこの部屋の鍵を開けるというのだろう。

 ご主人様を待ち受ける飼い犬のように廊下を走って玄関にたどり着いた瞬間、扉が開かれた。

 現れた人物に、私は目を見張る。

「優志くん――て、あら?」

 記憶にあったショートカットよりもわずかに伸びたボブヘア。それでも顔立ちの美しさは変わらない。ぴんと伸びた背筋に堂々とした佇まいの女性が、玄関に立っていた。

「新庄……さん?」

「結愛ちゃん⁉ うわあ、久しぶり! 元気にしてた?」