「簡単にフロアを案内するわね」と言って歩き出す彼女に、慌てて続く。
「私のポジションて、一応ブランド・マネージャーってことになってるけど、実質はなんでも屋みたいなものなの。あ、ここが給湯室ね。冷蔵庫は自由に使っていいから」
らせん階段を挟んでフロアの反対側にはコンロ口がついたキッチンと洗面所があった。シャワールームまでついていて、このまま普通に人が住めそうな空間だ。
もしかすると住宅用の部屋をオフィスにしているのかもしれない。
「あそこの仕切りの奥が社長室で、上の階はシステム部の部屋になってるのよ」
そこまで言って振り返った彼女は私と同じような背格好なのに、私とはまるで違っていた。

