社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

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 真夏の夜は、どことなく空気が開放的だけど、それは場所柄もあるのだろうか。金曜の夜ともなると、会社の最寄り駅は浮かれた顔の若者で溢れかえる。

 様々な商業施設や朝まで営業している店、夜通し開催されるイベントもあるらしく、社会人のみならず大学生らしき集団が入り乱れて駅前は混み合っていた。

「前原ちゃん、そんな緊張しなくて大丈夫だって」

 地下鉄のホームに下りたところで、左隣を歩いていた名取さんが苦笑する。

「取って食われたりしないからさあ」

「す、すみません。クライアントとの会食なんてはじめてだから……」

 予約している会席料理の店は、ここから電車で十分ほどの場所にあるらしい。てっきり移動にはタクシーを使うのかと思っていたけれど、この時間帯は道路が混むから電車の方が速いのだという。