平日の午後、都心のターミナル駅には大勢の人がいて、みんな土砂降りの雨を見上げながら時計を気にしている。その横を通り過ぎて改札をくぐろうとすると、隣の機械を通った名取さんが訴えるように私を見た。

「俺さ、最近前原ちゃんを見るとドキドキするんだよ」

「動悸・息切れなら、病院に行った方がいいんじゃないですか?」

「そういうことじゃなくて」

 階段を上りながら、営業マンはなぜかクライアントを説得するみたいに必死に言葉を重ねる。

「前原ちゃん、そんな外見だから誤解してたっていうかさ。見た目は地味なパッケージなのに、袋を開けたらとんでもなく美味そうなもんが入ってたっていうか。ほら、安納芋ってそうじゃん」

「……はあ?」

「だから、俺は前原ちゃんの皮を剥きたいっていうか」

「ひっ⁉ なんですかそれ、こわい!」