「ま、前原さん。行きましょう、早く! これは預かっておきます!」

 そう言って飯田さんが私からメガネを奪い、エスコートするように椅子から立たせて案内してくれる。ドアが開かれると、イソラの声が耳に入った。

「あ、着替えてくれた社員さん……ええと、結愛ちゃんの準備が完了したみたいです。どうぞこちらへ」

 私は飯田さんに背中を押されるまま、前に進み出た。ぼんやりと滲んだ世界で、イソラのシルエットだけが動いている。

「え、メガネ? ああ、はい。なるほど」 

 飯田さんと短くやり取りをして、イソラが私の手に触れた。

「ほら、みなさんどうです? 素敵でしょう。絶対に似合うと思ったんだから!」