イソラの意向を反映する形でヘアセットとメイクをしてくれていたスタイリストの女性が、ぽんと私の肩を叩いた。

　目を開けると、正面に設置された鏡の中にぼんやりと人の姿を確認できる。そこではじめて、私は自分の失敗に気付いた。

「見えない……」

　手元のメガネをかければ自分の姿を見られるけれど、メガネを外した状態の自分を確認することができない。たしかに、メガネ越しに見ても自分の雰囲気ががらりと変わったことはわかるけれど、いかんせん黒縁メガネの印象が強すぎる。

　後ろに控えてくれていた飯田さんも、改めて私を見下ろすスタイリストさんも固まったまま言葉が出ない様子だ。

「だ……だめでした？」

　プロの力を持ってしても、私の地味具合は払拭できなかったのだろうか……。不安になってメガネをかけたり外したりしていると、いきなり腕を掴まれた。