社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~



 洗面台の鏡についた水垢をきれいにふき取ってから応接ルームに戻り、二階を見上げた。

 そろそろ八時十五分になるのに、社長はまだ起きてこない。

 男性の身支度にかかる時間はよくわからないけど、大丈夫なのかな……。

 心配しつつ雑巾を持った手だけは動かしていると、どこかで音が鳴っていた。

 耳をすまし、それが音楽だということに気づく。外から聞こえてくるのかなと思いきや、発信源はどうやら二階のようだ。

 携帯のアラームかな?

 音に導かれるようにして階段のステップを上がっていき、社長の部屋の前に立つ。おそらく窓ガラスに遮光カーテンが引かれたままなのだろう、半分まで下りたブラインドの向こう側は薄暗い。音楽はやっぱりこの部屋から聞こえていた。