「……ええっと、メイクは外でするものですよね」
「……俺がいないとこではするな」
「はい?」
語尾を上げた変な声が漏れてしまう。上司に向けるにはまったくふさわしくない声音だったけれど、社長の言葉はそれくらい意味のわからないものだったのだ。
言わんとすることを測りかねたまま社長を見つめていると、パスタ容器の蓋を開けていた彼と視線がぶつかった。
えっと思う。
めずらしいことに、社長の顔が赤くなった、気がした。
「とにかく外ではやめろ」
「だから、なんでですか? せっかく社長がくれたのに」
口紅くらいしろという意味だと思ったから、あのパーティー以来、ものぐさなりにリップメイクだけは怠らないようにしていたのに……。

