仕事中は緊張感を漂わせてばりばり仕事をしているけれど、朝は寝癖をつけてぼうっとしていることが多い社長は、もしかすると『眠り』の欲求に弱いのかもしれない。
「同じ部屋に男がいるのがイヤなら、俺が下のソファで寝る」
言い放った端正な顔を、ふたたび見つめた。
同じソファに座り、ひとり分の空間を挟んで向こう側にいる彼は、まるでアップルパイだ。
以前勤めていたファストフード店で提供していたそれは、中の甘みと酸味が絶妙なアップルととろりとしたカスタードクリームを、パリッと香ばしい皮で包んだ人気商品だった。
「社長って……すぐに怒るけど、本当は優しいですよね」
「は?」
眉間にしわを寄せる彼に、笑ってしまった。照れ隠しという言葉が頭をかすめる。

