「そうですねぇ。でもやっぱりお金のことを考えると、シェアハウスも選択肢に入れた方がいいかなって」
缶ビールを口に運びながら笑うと、器用に楊枝を扱って塊の生ハムをほぐしていた社長の目が、すっと細くなった。
「名取と?」
思いがけない単語で、一瞬意味がわからなかった。それから失礼な発言を繰り返す営業マンを思い出し、慌てて手を振る。性急な動きにビールがこぼれそうになって、とっさにテーブルに置いた。
「まさか! インターネットにルームメイト募集のサイトがあるので。そういうので調べたり」
「……ふうん」
二本目の缶ビールを開け、社長はさらに深くソファに沈みこむ。いつもぴしりと背筋が伸びている社長の緩んだ姿だ。見てはいけないものを見ているような気分になりつつ、私は部屋の中を見回した。

