社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~


 そして思う。彼女は私がスティリスに入社するずっと前から、社長に想いを寄せていたのだ。新庄さんがいたころはさすがに遠慮していたという話を、確か板倉さんから聞いた気がする。

 小柳さんはきっと、新庄さんがいなくなった今こそチャンスだと思っていたはずだ。それなのに、私みたいなぽっと出のダッサい女に奪われた(と彼女は思っているに違いない)となれば、どれだけショックだろう。

「おい、こっちだ」

 ソファに腰を下ろそうとしていたら、らせん階段の上から呼ばれた。

 階段を上がると七階のメゾネットと同じ造りになっていて、ガラスの間仕切りと扉で仕切られた部屋がふたつあった。ただし、内装は七階のオフィスと全然違う。

 一方の部屋は物置に使っているらしく、本棚やハンガーラックがところ狭しと並べられている。他方の部屋には事務机の代わりにベッドが二台と、三人掛けのソファとテーブルが置かれていた。