社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~



 二十三時過ぎ、パーティー会場を出て連れてこられたのは見覚えのあるメゾネットタイプの部屋だった。

「ここは……会社の八階、ですよね」

「俺の仮住まいでもある」

「え、そうなんですか⁉」

 本社として機能している七階はオフィスといった感じだけれど、ミーティングの時に上がるだけだった八階はキッチンもバスルームも使える状態で確かに住居としての色合いが強い。

 室内用のシューズを履き、向かい合った三人掛けのソファを見下ろしながら、いつかの打ち合わせの場面を思い出した。

 小柳さん、大丈夫かな。

 初めて彼女と顔を合わせたのはこの場所だ。社長のアシスタントになったばかりで余裕のなかった私の目にも、彼女がわが社のトップを恋愛的な意味で狙っていることは明らかだった。