「バカ言うな。真夜中に女一人で一時間も歩かせられるか。どうせ外灯もろくにない道なんだろ」 「いえ、でも」 歩かないことには帰れないし、タクシーなんて待っていない駅だし、そもそもタクシー代だって支払えないわけで。 もごもごつぶやいていると、頭をぽんと叩かれた。 「来い」 「……へ?」 簡潔なひとことにぽかんとしていると、社長は面倒そうに眉をひそめた。 「宿を手配してやる」