社長が腕時計に目を落とすのにつられるように、私も自分の手首を見る。そして目を見張った。
時刻は二十二時半を回ったところだった。地元の駅から出る最終バスに間に合う電車はとっくになくなっている。
口を開けたまま声を出せないでいる私に、社長の呆れた声がかかる。
「帰れなくなったか」
「い、いえ……地元の駅までは行けるので、そこから歩きます」
「歩くって、どれくらい?」
夜になると途端に人気がなくなる地元のメインストリートを思い浮かべたら、頬が引きつってしまった。
「早足で行けば一時間くらいで着くので……」
私をじっと見ていた社長が、さらに呆れたように眉を下げてため息をついた。

