その態度に、私の思考も冷静さを取り戻す。
そうだよ。社長が私にあんなことを言うこと自体、おかしい。
あれはたんに、ダシにされただけだ。小柳さんの告白を断るために。
「嘘はよくないですよ……」
「は?」
私は口を尖らせて社長を見上げた。
「いくら告白を断るためだからって、別の女性に好意をちらつかせる方法は賛成できません……」
私みたいにイケメンに免疫のない人間には、軽いキスも甘い言葉も刺激が強すぎる。
責めるような私の視線をまっすぐ受け止めて、社長は答える。さらりと、表情ひとつ変えずに。
「嘘は言ってない」
「……え?」
「ていうかお前、帰れるのか?」
「へ?」

