「しゃ、社長!」
クッションだと思ってかじりついていたものが社長の膝だということに気づき、飛び起きる。
「え、あれ、え?」
ずり落ちかけたメガネを直して辺りを見回すと、そこはたしかにさっき私が座っていたソファだった。ただし、結城さんや峰島さんの姿はない。
「結城たちなら帰ったぞ。ていうかお前、酒を一気にあおった後に走ったんだって? だから急激に回るんだよ」
怒ったように言いながら長い脚を組む社長をこっそり見やる。
ぼんやりした意識の中で、恐ろしいほど整った容姿にそのままくぎ付けになった。
なんでこの人、こんなにかっこいいんだろう。
ソファの背もたれに腕を回してつまらなそうにフロアを眺めている社長は、さながら俺様王国の王様だ。召使いを厳しく管理し、自ら政治を執り行う威厳たっぷりの絶対君主。そんな君主様の切れ長の目がじろりと私に向けられた。

