社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~



 気が付くと、ソファにいた。

 靴を履いたまま上半身だけ横たえている状態で、ぼんやりと視線をさまよわせる。

 にじんだ視界には、さっきまでいたイベントフロアの景色が広がっているようだった。色とりどりだった照明はそのままで、アップテンポだった音楽はギターの弾き語りに変わっている。フロアに散っていた人が前方に固まってライブ演奏を楽しんでいるのがかろうじてわかる。

 ごろりとクッションに頭を押し付けて、ぼやけた記憶の糸をたぐる。

 たしか、社長と路地にいたはずなのに……。

「……夢かな?」

「いい夢だったか?」

 真上から落ちてきた声にぎょっとした。私が右手であたりをまさぐるよりも早く、誰かの手がメガネを装着させてくれる。そして真正面に私を見下ろす整った顔を認めた。