「いえ、ですからうちの社長は失恋の傷を別の女性で癒そうとするタイプではないので……むしろ仕事に生きてるので」
「……失恋してねぇよ」
ぼそりと落ちてきた声に顔を上げると、社長が笑みを引き攣らせたままこめかみに怒りの筋を浮き上がらせていた。
うわ、だいぶ怒ってる。
「あの、ということなので小柳さん。申し訳ありませんが社長のことは」
「うるさいわね!」
一段とヒステリックな叫びに肩が震えた。小柳さんは美しい表情に憎悪の念を込めて私を見ている。
「あんたに言われたくないのよ! だいたいね、なんなのよその格好! だっさいスーツ着て、陰気なメガネかけて! ここがどういう場所かわかってるの⁉」

