社長の声がいつもより低くて、私は思い出す。そういえば、前に会社でLANAの担当者と打ち合わせをしたときも、社長の声は不自然に低かった。低いというか、硬いというか……。
すぐ傍らの整った横顔を見上げる。クライアントに対するいつものビジネススマイルだけど、目が笑ってなくてピンと来る。
社長は小柳さんの好意に気づいていて、わざと態度に出していたのだ。これ以上近づくなというように、プライベートまで踏み込ませないように、距離を取ろうとしていた。
だけど小柳さんには通じなかったようだ。
「でも新井さん、新庄さんに捨てられたんですよね? それなら私が代わりになりますから。私、自信があるんです。失恋の傷、癒してあげます」
今にもオフショルダ―の肩をずらして胸を露出しそうな気配に、私の方がぎょっとする。あたりを見回し人気のないことを確認して視線を戻すと、小柳さんは社長の手を取って自らの胸に押し付けていた。

