私に気づいた社長が、こっそり息をついた。そして彼女に優しく話しかける。
「小柳さん、少し外の風に当たりましょう」
目線を上げた彼女に小さく微笑んで、社長は扉の方へ歩いていく。
え……なに? いったいどういう状況?
ぽかんと立ち尽くしていると、社長が鋭く振り返り、【来い】というように目くばせをした。
わけがわからないまま彼らを追って通りに出て、展示会場脇の路地に入る。
小柳さんは相変わらず項垂れたまま、それでも社長の正面を陣取って動かない。
「どうして、ダメなんですか……?」
細い声がぽつりと落ちる。社長の陰で息を殺しながら、私は彼女を窺った。
「すみません。気持ちはありがたいのですが……」
これは……もしかすると、小柳さんが社長に告白をした?

