ハイブランドの旗艦店が立ち並ぶ洗練されたメインストリートを、社長は一瞬も立ち止まらずにギャラリーまで歩き切った。私が小走りしないと追い付けないくらいの速度で。
昔からああいう状態だったというなら、社長がやたらと早足なのもうなずける。
「前原さんはいつ入社したの?」
結城さんが優しく話を振ってくれて、私はドリンクのカップをサイドテーブルに置いた。
「四月からなので、二ヶ月と少し経ちます」
「そうなんだ。新井さんが採るってことは、ずいぶん優秀なんだな。あの人の目は相当厳しいから」
「いえ、全然ですよ。どうして採用してもらえたのか、自分でも不思議で……」
『社長の採用基準』
それは入社して以来答えにたどり着けない、最大の謎だ。

