覚えることがたくさんあって、頭もメモ帳もパンクしそうだった。

 だけど、すごく楽しい。

 スティリスに入って二ヶ月が経ち、改めて自分の置かれた環境を振り返る余裕が出たせいだろうか。

 自分が今、大きなドアの前に立っている気がした。

 開かれた扉の向こうには、私には縁がないと思っていた華やかな世界が広がっている。一生関わることはないと思っていた人たちが、私を見て微笑んでいる。

 ハンバーガーよりもずっしりと重みのあるカメラを持ち直して、これまで自分がいた小さな世界に想いを馳せていると、表の方から声が聞こえた。

「あ、新井さんだぁ~!」

 入口のドアが開いたと思ったら、ふたり組のきらびやかな女性が入ってきた。瞬時にモデルだとわかるくらい、ふたりとも手足が長く、驚くほど顔が小さい。