幸せを奪った。
あの温もりを奪った。
あの笑顔を奪った。
俺からルシアスという、俺にとって全てであった人を奪った。
許せない。許しはしない。
たとえ彼女にどんな理由があって、どんな哀しみを抱えてどんな想いを持っていたとしても。
「.........お前達は此処で待機していろ。
俺は前線で戦っている兵達に加勢してくる。
もう一度言っておくが、今のこの辛さを耐え忍ぶんだ。
そうすれば勝機は必ずある」
「た、隊長?」
兵の疲労は相当溜まっていた。
だがそれ以上に、彼等を指揮しその上に戦っているライルの疲労はもう限界に近いはずだった。
だが、ライルは剣を握る。
正直、疲労で身体が悲鳴を上げていた。
だがそれよりも、自分の中に湧き上がる感情の方が圧倒的に強くて。その感情がライルを突き動かす。
「もし.......もし俺が戻らない間に戦況が動いたら、自分達の信じるように行動しろ。
ただし、この勝つための戦を投げ出すような真似だけはするな。
―――まぁ、俺は例え味方が誰一人居なくなったとしても戦うことは止めないが。
全ては、魔族の......そして何よりルシアス姫様のために。
分かったな?
じゃあ、俺は行く」
キイィンッ。
鞘から引き抜いた剣が、甲高い金属音を上げる。
それから近くに待機させていた自分の馬を合図して呼び寄せ、ライルはその背に勢い良く飛び乗った。
「行くぞ」
手綱を思いっきり引く。
馬が天を突くように嘶く。
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