mirage of story





 
 
 
あぁ、これが本当に悲しいということなのか。

心臓を貫かれるような痛み。
じわじわと心を侵蝕していくような痛み。



あぁ、そうか。
彼女はもう、この世界には居ないのか。
自分は結局、彼女を守ることが出来なかったのか。



込み上げるは後悔。

..........。
そして追い掛けるように激しい憎悪が全身に迸るのを感じる。



許せない。
許してはいけない、どんな理由があったとしても。

人間達を、許すことは出来ない。



自分の命とも言える指輪を自ら誰かに渡すなど、考えられない。

彼女は奪われたのだ。
誰かに人間に、指輪を―――そして命を。







どうして。
どうして彼女がこのような目に遭わねばならなかったのか。

彼女は誰より平和であることを望み、人の幸せを望んでいたのに。
どうして、彼女でなければならなかったのか。



失望の闇。
目の前が真っ暗になり、思考は真っ白になった。

その黒と白に頭がくらくらして、何もかもが遠退いた。



........。
そしてそんな彼に届いてしまったのは、遠く聞こえるロアルの甘い囁き。


"我々と共に、姫の恨みを果たそうではないか"
その言葉が、ライルにはやけに優しく響いてしまった。
復讐。その言葉が彼に深々と刻み付けられた。







倒す。
倒さなければならない。

彼女命を奪った人間に、報復を。復讐を。
必ず、この手で。


真っ黒に汚れた復讐心に、彼は誓ってしまったのだ。

彼女のために―――守れなかった彼女のために、何もかもを捨て人間に復讐するということを。

どんなことをしてでも、彼女の仇を討つということを。








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