ルシアス姫さんとは、あのライルには及ばないが幼なじみだった。

とは言っても俺は普通に町の一般人の子で、相手は一国の姫ってわけだから幼なじみっていうのも何だかおかしいが。



でも姫さんはそんなこと気にする奴じゃなかったし、もちろん俺も気にする奴じゃなかったから、普通に町にライルと姫さんと一緒に繰り出しては騒いでいたもんだ。

あの時は俺もまだほんのガキだったが、ガキなりに楽しかったし姫さんのことも少し気になってたりはした。
まぁ恐らく本人は気が付いてなかったと思うが。












だから姫さんが死んだと聞いた時は、人間に殺されたと聞いた時は―――頭がおかしくなるかと思った。


戦いとか人が死ぬとか、そういうのは嫌いだった。

だがあの時俺はルシアス姫さんを殺した奴を見つけ出して、この手で殺してやる。
そう思って軍に入った。





最初はルシアス姫さんの親父さんである前王の元で、それから前王が死に今度はロアルの元で戦いに出た。

人間を許さない。
それこそ、今のライルのようにひたすら人間を恨み憎み殺した。




殺して殺して。
相手が人間である、ただそれだけの理由で殺した。



ルシアス姫さんのため。
最初はそう思っていた。

だが時が経っていくにつれ、自分は何のために人間をここまで憎み殺しているのかが分からなくなった。

泣き叫ぶ子供、逃げ惑う人。
それを殺すことがだんだんルシアス姫さんのためとは思えずに、ただ自分の哀しみを人間を殺すことで晴らしているだけに思えてきたんだよ。




........そう一度思ってしまったら、何だか虚しくなってきちまってな。
もう姫さんのためにならねぇ、姫さんが喜ばねぇことはしたくなくて軍を抜けたわけさ。

結果、反逆者として追われる今の身になっちまったけどな。









それでもすっきりした。

やっとこれで、無意味に哀しみを晴らしてきた負の柵から抜けられる。
ただ自分だけで誰とも深くは関わらずに、復讐とか面倒臭いことはもうせずに気ままに生きれるなんて。









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