mirage of story











.........前王は、全て知ってたって訳か。
全てを知っていてそれを踏まえた最後の、最良のことを死んでいく前にちゃんとやってたってことか。








日に翳された白紙の頁。それは世界の歴史を記した、新世界白書のほんの一頁。


ッ。
浮かび上がるのは、今まで見えなかった文字。
隠された知られざる、王の本当の最期の記述。










「まったく.....本当にあの人は最期まで賢明な人だったな」




今はもうこの世に居ないその人を想像して、呆れたように笑う。


日の光に浮かび上がる文字が語るのは、当の本人さえが今更になって知り得た真実。
それを記した、今から五年近くも前の王の記録。















ーーー
"人間達が我々に戦を仕掛けてきた。


どうやら誰かがルシアスが指輪の契約者となったことを知り、風潮したらしい。
風潮したのは恐らく.........いや、人を疑うのは良くないことだ。
彼がそのようなことをするなど、私は信じたくはない。



そんなことをすれば、人間達が指輪の力を恐れ自らを守ろうと行動に出るということは、目に見えていたはずなのに。
―――まさか、戦争を起こすつもりなのか。



今が平和であるのに、何故そのようなことをする必要があるのかは私には到底分からないが、このまま黙って見ているわけにはいかない。

......あの子は必ず守らねば。
ルシアスは私達の宝だ。戦争などにそれを奪われるわけにはいかない。




人間達の勢力は、思っていたよりも遥かに強大だ。
用意も周到。まるでずっと前からこうなることを予測していたかのように。

兵の疲労も激しい。
それにこんな無意味な戦争でたくさんの命を失わせてはいけない。



このまま行けば、我々が押し切られるのも時間の問題。
そうなれば、ルシアスは殺されてしまう。



..........あの子の力なら、この戦争を終わらせることがきっと出来る。

でもあの子はまだあまりに幼すぎるのだ。
あの子に全てを背負わせるには、あまりにも酷すぎる。








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