神様よ?
何でよりによって、あの子にしちまったんだい?
こんな広い世界。
他にも一杯居ただろうに。
無意味にただ生きている奴とか、命の価値も知らない生きる価値もない奴とか。
一杯居ただろうに、何でそんな奴等じゃなくあの子を―――嬢ちゃんを選んだんだい?
ジェイドは神に心でそう問い掛けながら、そっと懐に手を掛ける。
何かを探るような仕草。
そしてその何かを見つけ、それを引っ張り出す。
パサッ。
懐から取り出されるのは、一冊の古びた本。
見た目にはその価値など到底分かり得ない本だが、ジェイドはこの本がこの世界にとって重要な価値があることを知っている。
だがジェイドの手つきはそうとは一切思わせない程に適当で乱雑であるために、この本の価値を知っている者がこの場に居たなら確実に取り乱すだろう。
「.......まさかとは思っていたが、本当とはねぇ」
乱雑にページをパラパラ捲る。
文字がびっしり書き記された頭が痛くなるような頁を、読む素振りさえ見せずにすり抜ける。
パラッ。
そして手を止めるのは、文字の書かれた最後の頁.......の次の頁。
その頁には何も書かれてない。
紙が古く黄ばんでいるので白いという表現が当てはまるかは疑問だが、全くの白紙の頁だ。
その頁をジェイドはやる気無さそうに見つめ、それから何を思ったか本を持った手を空に突き上げ、その頁を緑の隙間から射す太陽の光に翳した。
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