mirage of story

〜4〜










とうとう、事が本格的に動き出したか。

嬢ちゃんもカイムも、もうただ魔族を憎んで討とうとしていたお遊戯程度の下らない復讐劇の主人公では無くなったわけだ。










......全く、嫌だねぇ。
あいつらにこんな深入りするつもりは、更々無かったのに。


ただあいつらの言う仲間ってのはどんなもんか。
ただ面白そうだから、付いて来ただけのはずだったんだけどな。



本当に、嫌だねぇ。

...........こりゃもう、他人事なんかじゃ無くなっちまった。










ジェイドが空を見上げて、溜め息をつく。

見上げる空はまだ明るいはずだが、鬱蒼と周りを囲む緑のせいでやけに暗い。
今の時間でこの暗さなのだから、夜になれば真っ暗になるのだろう。



ジェイドは何度も出る溜め息に半ば飽きたように、緑の中に佇む唯一の人工物―――ジスに案内された彼等の砦である古びた城のその壁にやる気無さそうに凭れ掛かる。

壁からは細かい粉がボロボロと落ちたが、さすがに崩れたりはしないだろうと気にはしなかった。
















運命ってのは、全く皮肉に出来てるもんだねぇ。

...........あの嬢ちゃんが、ルシアス姫だなんて。




逃亡者として、ルシアス姫の仇として追われていた嬢ちゃん。
それが一変、亡くなられたはずのルシアス姫ってわけだ。

何をどうやったら、こんなことになっちまった訳だい、神様よ?



これが神様、あんたの意図って言うならもう呆れるしかない悪趣味だぜ?
そんな趣味、無くした方が絶対いい。











「ふぅ.......」


息だけだった溜め息が、今度は声に出た。









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