だが、彼だけは諦めずに居た。
ライルしか、そう信じ切れる者は居なかった。
そんな最中のこと。
今まで魔族の王として君臨してきたルシアスの父が病に倒れ、この世を去ったのだ。
本来なら王位を継ぐ者、つまり彼女が次の王となるはず。
だが彼女は今この世に居るかすら定かではない。
問題となる王位の継承。
次の王は誰か。
そこで名が上がったのがロアルだった。
ロアル。
彼は古くからこの王家に仕え、王からも他の者からも信頼が厚かった。
前王が逝ってしまった今、次王にふさわしい人物というと他には居ないという皆の見解だった。
―――。
ロアルが王位に就き始まる新たなる政治。
彼の統率で魔族たちの思想は大きく変わった。
今までの国は前王の穏やかで威厳ある人格により、平和を求める思想であった。
だがロアルは今までのそんな思考から真っ向から対立。
"人間は我々の最大の敵である"そんな言葉と真逆である考えを掲げた。
勿論、民は戸惑う。
だが王の考えは魔族全体の考え。
心の中に疑問を抱えつつも、逆らう者は居なかった。
掲げた言葉の元、ロアルは兵力を上げ人間の国を襲うようになる。
一層に深みに嵌る戦い。
人間たちは魔族を憎み、魔族たちも人間たちを憎む。
この世は完全に争いの世に装いを変えた。
そして今から一年前。
ロアルの王政が始まり、再びの転機がライルに訪れる。
それは、彼と王となったロアルの再会から始まった。
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