mirage of story













私は一体、誰として生きていけばいいのか。

一体誰と共に行けばいいのか。
誰か私を受け入れてくれる人は居るのか。



疑問と不安だけが幾重にも重なり重みを増す。








独りは怖い。
突き放されるのも、見捨てられるのも。

でも、逃げてはいけない。
自分の罪や責任から逃げてしまえば、その荷はきっと誰かに渡ってしまうから。


突き放されても見捨てられても、独りになっても突き進んでいける勇気が欲しい。
そんな強さが欲しい。























「........入るよ」



森を抜け案内された緑の中に佇む古城。
その中のジスに案内された広い部屋の一角でそんなことをひたすら考えていた私の耳に、聞き慣れた声が届いた。






「どうぞ」



部屋の扉は閉めていなかった。
だから扉の枠の外側に見える紅の影に、私は短く返事をする。





ッ。
その私の返事を確認して、紅の影―――カイムがゆっくりと穏やかな足取りで部屋の中へと入ってくる。

いつもと変わらない二人。
だけれど空間に満ちる空気は、ぎこちなく重かった。









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