「........此処では落ち着いて話は出来なかろう。
積もる話もありましょう。
さぁ、どうぞ我等が砦へ。
盛大にもてなすというようなことが出来ないのは申し訳ないが、我等は大いに貴方を―――そして君達を歓迎しましょう」
そう言うジス。
シエラはこくりと頷いた。
此処では話しきれない。
本当はこんな唐突な形で話したくはなかったのだが、もう仕方がない。
だからせめて、何処かもっと落ち着いた所でちゃんと自分の口から全てを話したいとシエラは思った。
「........ちゃんと全部話すから。
ごめんなさい、カイム」
「..........」
サッ―――。
カイムの横をシエラがすり抜ける。
その彼女の瞳が強くてでもそれ以上に辛そうで、すり抜ける瞬間に互いに目を合わせなかった。
すり抜けたシエラに纏う風が周りに茂る緑を心地よく軽くサラサラ揺らしたけれど、それとは裏腹に空間は重い。
その重さから逃れるように、横をすり抜けた彼女の背中はカイムからどんどん離れていった。
「では、御案内致しましょう」
この空間の中、ジスだけが大切な人との再会に心躍らせる。
そのジスな声にシエラもカイムも、そして空間から半ば疎外されていたジェイドもロキも心を靄で曇らせて、ただ今はジスの後を追うしかなかった。
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