「私は、シエラじゃない」
二度目。
同じ言葉を、一度目よりも強く言い切った。
「..........私はシエラでありシエラじゃない。
カイムの言うことも間違いじゃない。ジスさんの言うことも、間違いじゃない。
私はシエラ。そして私は、ルシアス」
真っ直ぐ見て言った。
何も隠そうとはしなかった。
その強い瞳に、カイムは口にしかけた驚きと戸惑いの声を飲み込む。
「......ジス。貴方のことも覚えています。
私がまだ幼い頃によく面倒を見てくれた、色んなことを教えてくれた。
父も母も私も貴方を頼り、そして尊敬していた。
今まで忘れてしまっていたけれど、思い出しました。
あの頃の、幼い頃の私がまだルシアスとして生きていた頃の記憶を」
「ルシアス様......」
シエラ。
そう呼ぼうとしたけれど、カイムは呼べなかった。
彼女は、もうシエラではないのだ。
今目の前でルシアスと呼ばれる彼女を見て、心の奥でそう確信した。
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