mirage of story












素直にカイムの言葉を肯定出来ない自分が嫌だった。


何も知らなければ。

昨日あの泉に行かなければ。水竜と再び会わなければ。
何も知らないままの無知なままだったなら、こんな自分にはなっていなかったのに。






















「...............私もそう思っていた。そう思って生きてきた。
だが彼女を見た瞬間、私の中に在ったその思考が音を立て崩れ去ったのじゃ!


間違いない..........間違えるはずはない。

彼女は―――そう貴方は、紛れもないルシアス姫様じゃ」




強烈な確信の籠もったジスのその声。
痛むシエラの胸に留めを刺す。


その確信を帯びた言葉を、真実を事実を否定することはもう出来ない。




ッ。

シエラはフッと、俯けていた視線を前へと向ける。
視線の先にカイムとジス。その端にただ見守るだけのジェイドとロキを映した。

















「シエラ?」


「............私は、シエラじゃない」





自分をシエラと呼ぶ声を、彼女はばっさりと否定する。









「え?」




意表を突かれた声。
まぁ、無理もない。



シエラが、シエラじゃない?
その言葉はまるでジスの言葉の意味を肯定しているようで、カイムの頭中は混乱。









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