「神が与えて下さった褒美。
それがそう................ルシアス様、貴方です。
お会いしとうございました」
ルシアス。
はっきりとそしてくっきりと、空間に残る響き。
此処には居ないはずの一人の少女の名前。
......誰も知らないはずだった、シエラの中に埋もれるもう一人のシエラの名前。
それなのに、この人は。
どうして、シエラの水のように澄む青い瞳を見つめてその名を呼ぶのだろう。
「ル....シアス?」
聞き慣れない名前。
でも確かに何処かで聞いたことのある名前。
シエラの答える声より先に、繰り返しそれが誰であるかを思い出すように言うカイムの声が響いた。
ルシアス。
ルシアス.....ルシアス。
何度か呟いた。
それから数秒経って、カイムの脳の中でその名前と一致した情報が引きずり出される。
あまりに意外な、そして今のこの場には決して関係のないようなそんな人の名前であるということが頭の中で繋がった。
「魔族の、姫―――?」
「.........」
繋がった情報が疑問の形となり口にされ、その声にシエラは無言で唇を噛み締めた。
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