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暫くの沈黙の中、ジスはその瞳に懐古の念に煌めく。
「...................お懐かしい。私はこうしてまた貴方と相見ゆる日が来るなど、想像もして居らなんだ。
どうかこの私をお許しを。
絶望を前に、貴方の生への希望を自ら消し去って生きてまいったこの愚かな一人の老いぼれを」
その瞳は、涙に濡れていた。
あぁ、この人は。
自分のことを見て涙を流す、この老人は。
そしてシエラはハッとする。
自分の中の遠い過去の記憶――取り戻した喪われていた記憶の中に、同じ瞳を見付けて。
「あ......」
言葉が。
言葉が出ない。
「シエラ?」
心配するカイムの声。
覗き込むその顔にさえ、シエラは何も反応する事も出来ない。
頭の中にはただ、一度は忘れたはずの記憶の数片の欠片。
まだカイムとも出逢う前に、幼き頃の思い出。
「貴方の生を諦めて、進んでいく不条理な世界の運命に必死に逆らって生きていた。
随分と時間はかかってしまって、気が付けばもう後先も短いこんな情けない姿になっていた。
だが、ここまでやってきた。
貴方の無念を、そして貴方のご両親の無念を。そして奴の闇に塗られた陰謀をこの手で断ち切るためにじゃ!
.......そして神よ。
貴方はそんな私に、最期にして最高の褒美を下さった―――!」
ジスの息遣いが荒くなる。
興奮。歓喜。
それらが混ざり合ったものが、老いた彼の体中から沸々と湧き上がる。
シエラはそんなジスを見つめたままで、空間から弾かれたように把握出来ない三人はただ黙ってそこに存在した。
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