mirage of story











「ですが旅の目的の全てが、父を捜すためのものではありません。

寧ろそれは二の次で、第一の目的は今この世界を争いで混乱に陥れようとしてる魔族を......その王を討つことです」



「そうか、では何処かで少し情報が交錯してしまっていたようだ。
すまないね」



「..........いえ」








魔族を討つ。
魔族の王を討つ。
その自分の言葉にカイムは一瞬動揺して、それを悟られるのを恐れてスッと表情を伏せた。



だけれどジスの冷静な答えと、様々なものを刻みつけてきただろう瞳には何もかも見通されている気がしてならない。


怖い。この心を見透かされるのは、怖い。

本当の自分を、その存在を。自分に秘められた全てを、背負わされた重すぎる罪を。
あの瞳に見透かされるのは、物凄く怖い。




そんな恐怖がカイムの中を駆け抜けるが、それをグッと堪えて言葉を切った。























「..............さて」




そんなカイムの内を知ってか知らないでか、ジスは暫く揺るがない瞳の奥でカイムの紅を見つめると何事もなかったようにフッとその目を伏せた。


その閉じられた目尻の辺りには深い皺が依る。
その皺には長年身に刻まれてきた苦労と、彼が重ねてきただろう時―――この場に居る他の四人が生きてきたよりも遥かに長い年月が見えた。











「そして最後に.........君のことも知っている。

そうそれも、君のことはずっともう忘れかけてしまっていた程の昔から」



「え?」




開いたジスの瞳が映し出した先には、シエラ。
真っ直ぐにそして何故か緊張したように見つめるジスの瞳に、視線の先のシエラは戸惑いの声を返す。







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