mirage of story












ほら、そんなことをふと思っている間に。







――――ドンッ。

余所見をして歩いている三人。そのうちでも半歩程前を行っていたジェイドが前の何かにぶつかった。


周りは森なので木にでもぶつかったかと思ったが、木ほどの固さも衝撃もない。
固くもなく柔らかくもない、その触覚は人。















「あ、すまねぇロキちゃん」



前を行っていたロキが、いつの間にか足を止めていた。
それに気が付かずに、ジェイドがロキの背中にぶつかったようである。











「でも一体どうしたんだい?
急に止まったりなんかして、びっくりするじゃねぇの」



おどけたようにジェイドが笑いながら言う。


何か気に入らないことでもあったのか?
だとしたら、確実に今の会話だろうが。

これでまたロキが殺気満々で短剣を抜くのではないかと、カイムだけがひやひやしていたのだが、どうやら今回はその必要は無かったらしい。
ロキは立ち止まったものの後ろを振り返りはせず、ただ前を見据えたまま静かに言った。











「............誰かがこちらに―――来る」



ッ。
その言葉が零れるのとほぼ同時くらいに、前を行くロキのそのまた前の草陰がガサリと揺れる。


濃淡のある森の緑の色彩の中から、スッと覗く細く長い黒い影。
そしてその黒い影はゆっくりとこちらに近付き、それを暫く見ていたロキは彼にしては珍しく目を見開き驚きの表情を浮かべる。









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