mirage of story

〜2〜









静かな森の中。
シンッと耳が痛くなるくらいの静寂の中、湿った土を踏むヒシッという音がする。


緑に水が滴る。
きっと夜の冷えた空気が、朝日に照らされて水に還ったから。

深呼吸をしてみれば、心地良い湿気に口の中が潤って眠さから頭が覚醒した。
あまりに心地良くて、自分達の目的を忘れてしまいそうだ。














「もう少し。
此処を抜ければ、もうすぐそこにある」




四つの影。
一歩前に出てロキが後ろからついてくる三人を誘うように歩き言う。


目の前は森の緑。
この先と言われても、先が見えないのでいまいち距離は掴めないが、それほど遠くはないはずだ。






空には朝日がだいぶ高くまで上がり、空気を温め気温が高くなってきた。

木陰ばかりで且つ湿気の多い森の中なので暑いと思うことはなく、むしろ心地良い。
ただ周りの木々の葉に付く水滴が時々落ちてきては服を湿らすので、歩く四人の服は若干濡れていて少し冷たかった。
















「やっと着くんですね......」



ロキの後を追い掛け歩く三人のうちのカイムが染々と言う。

その声は疲れているようだったけれど、それでも明るかった。











「おいおい、大丈夫かよ?

結局カイムお前、昨日一晩中起きてたんだろ?
だから早く寝ろって言ったのに、自業自得だな」



「........すみません、考え事してたらいつの間にか朝になっていて。

あ、でも大丈夫です!
少しは寝ましたから」









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