(...........。
でもやっぱりあの人)
夢で感じた死の恐怖。
涙の理由はそれであろうと断定するが、やはり気になるあの少年の存在。
ッ。
思い出すと胸が締め付けられる感じに襲われる。
何故だか胸がざわつく。
同じ夢の中で感じた死の恐怖よりも、少年の存在の方が強烈に脳裏に焼き付くのだ。
少年の蒼、青。
少年の放った声。
どうしてこんなにも気になるのか判らない。
たかが夢の話であるはずなのに。
(何....この気持ち)
シエラの心の中をモヤモヤとした闇が支配する。
あの夢の中の少年は誰で、何故自分を知っているのか?
ッ。
そんなことを考えようとすると頭が鎖か何かで締め付けられるような感じがする。
まるで思い出すのを拒むように頭の中が軋む。
起きたばかりの頭では、思い出せることも思い出せない。
考えれば考えるほど頭がこんがらがった。
痛い。
これ以上考えられない。
......サァーッ。
ッ。
突然に吹き抜けた風の音。
その風にシエラはハッと我に返る。
窓の外を見ると、もう陽が高くまで昇っている。
もうお昼くらいだろう。
差し込む太陽の光が眩しい。
(っ!もうこんな時間!)
何だかんだ考えてるうちにだいぶ時間が経っていたらしい。
痛む頭はまだ気になるが、今はそれより先にやらねばならないことを思い出す。
シエラは、ハッと思い立ち急いで支度を始める。
差し込む太陽に背を向けて、部屋の隅に置いてある大きな鞄の前に来た。
この鞄は彼女愛用の旅鞄。
まだ昨日帰ってきたばかりだったので整理し切れていなかった。
ッ。そんな鞄の中から幾らか服を引っ張り出して着替える。
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