この指輪は、シエラがエルザと出会う前から持っていた。
そして、これはシエラが何者なのかを示す唯一のものだ。
エルザを失ったあの日。
ロアルはこの指輪を狙っていた。
そして今、ロアルと同じ魔族のライルもこの指輪を狙っている。この事実。
シエラは、ずっと疑問だったのだ。
一年前のあの日。
シエラはエルザを助けるために指輪をロアルに渡そうとした。
エルザを助けることが出来るのなら、渡しても構わない。そう思った。
なのに、そんな時エルザはこう言った。
『その指輪を渡しては駄目!それはあなたの生きている証なんだから』
言葉の意味は理解出来なかった。
だけど結局、シエラはエルザの言う通りロアルに指輪を渡すことはなかった。
そしてその結果、エルザは死んだ。
あの時、もしロアルに指輪を渡していても結果は同じだったかもしれない。
けれど、シエラは後悔した。
エルザが死んだのは自分が指輪を渡さなかったせいだ。
どうしても思ってしまって。
そしてシエラは何度も、この指輪を捨てようと考えた。
エルザが死ぬ原因となったこの指輪を持っていることが、この上なく辛かったから。
でもこの指輪を捨ててしまったら、自分は本当に何者なのか分からなくなるような気がして。
自分の存在がなくなってしまうそんな気がして、今日この日まで捨てることが出来ずにいたのだ。
だが、どうだろう?
今、シエラの目の前にいるライルたちはこの指輪を求めている。
このエルザの死への戒めの指輪を、理由は分からないが彼等は欲している。
(――――この指輪を渡してしまえば)

