シエラはロアルへと向けていた視線を、ライルへ移す。
ライルは真剣な眼差しでロアルの方を見ている。
あまりにその瞳が真剣で、何だかシエラは寒気がした。
(―――何だ、この感じ)
シエラにはこの寒気は、ライルの心に秘めた哀しみがこちらに伝わってきているからだ。そう感じた。
空間の中。次第に増して行く熱気を、彼は幾らか冷ましているようだった。
「.....ライル。
今お前の目の前にいるその娘こそ、我等の捜す者に間違いはない。
魔力を感じたというのは恐らくこの者が持つ指輪―――ルシアス姫の指輪に宿った魔力のせいであろう。
この娘のものではない。
ライルよ。この者こそ、ルシアス姫の命を奪った人間、お前の.....最大の敵だ」
辺りは沈黙に包まれる。
ロアルの低い暗い声だけが、辺りにやけに重く響き渡った。
「―――うそ....だろ」
ライルは、今ロアルが言った言葉を確かめるかのようにシエラの方を振り返る。
彼女を凝視するライル。
―――そして、ライルは見つけてしまった。
シエラの首元で儚く光る指輪を。
その胸元で見え隠れする淡く輝く、光を。
それは紛れもないライルにとっての大切な人、ルシアスの指輪だった。

