mirage of story

〜6〜








照らし続ける月灯り。靡く長い漆黒の髪。

漆黒の瞳を携えてこちらに近付く闇は、炎に照らし出され実に不気味で妖艶。



―――ロアル。
どれだけこの男を憎んだことか。
どれだけこの男のせいで大切なものを失ったことか。

ッ。
思い返すだけで、彼女の血が沸き立ち騒ぐ。














「遊んでいる暇はない。

一刻も早く奴を見付け出さねばならぬ。
面倒なことになるその前に、奴を始末せねばならぬのだ」




カツンッ。

彼女の視線を釘付けにする闇色が、彼女とそしてライルの前で止まった。


――――。
闇の足元に転がるのは、先程ライルに弾き飛ばされ落ちた剣。

それを拾い上げ言う闇の声は、やはり冷たい。










「分かっております。

.......ですが、少々の問題が発生して」




丁寧な言葉遣い。
まるで先程とは別人のような彼はそう言い、闇に釘付けにされたままの彼女を見る。



少々の問題。
それはきっと、彼女のことなのだろう。

彼の手がスッとシエラの方に向く。
その手に導かれ、ロアルの瞳が彼女を捉えてしまう。











「―――ッ」




目が合った。
一瞬、驚きを隠せずに漆黒の瞳が見開く。


ッ。
それはほんの一瞬ですぐに無表情な顔に戻るが、その顔には先程にはなかった不気味な笑みが張り付く。

"見つけた"。
声には出されなかったが、その目は確実にそう語る。







「―――――!」



ロアルは拾い上げたシエラの剣を暫く炎に掲げて眺めて、そしてバッと投げ捨てた。

カランッと虚しく転がる金属音。
投げ捨てられた剣は、もう確実に今の彼女の手には届かない。

そして不気味な笑みを顔に張りつけたまま、彼女に向かって口を開く。













「何だ........もう見付けていたか。
ライル、流石は優秀な我が同朋であるな」



取り囲む炎にやけに大きく響いた。
 
 





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