生まれながらにして与えられた、誰をも凌ぐ力。
人々の尊敬の的。
また人々の脅威の的。
勝手に敬われたりするのが嫌だった。
かといって、勝手に恐れられるのも敬遠されるのも嫌だった。
だから、だから彼女は必死に"普通"を生きようとし、それを望んでいた。
神が彼女に与えた"特別"である運命に、必死に抗おうとしていたのだ。
そんな意味では彼女も他の多くの者達と同じ、彼女が望んだ"普通"であったのかもしれない。
ただ、彼女に与えられた運命はあまりに強烈で、まだほんの幼かった少女には抗い切れなかった。
あまりに過酷だった。
ルシアスの運命は彼女の意思とは裏腹に、世界に戦争を招いた。
その戦火は多くの罪無き者達を巻き込み、彼女自身を破滅させた。
しかも神がルシアスに与えたその過酷すぎる運命は、それだけでは飽きたらずに尚もこの世界に暗い争いの陰を落としている。
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